正距方位図法とは、その名が示すとおり、正しい距離と正しい方位を求めるための図法である。地図といえば、長方形に引き伸ばされ、経線と緯線とが直角に交差するメルカトル図法が一般的だが、もちろん他にも様々な種類がある。いくつもの種類が存在するということは、逆の言い方をすれば、地球を表現し得る究極の方法は無いということでもある。そこに地図の限界があり、同時に人間の英知がある
日本を基準に描かれた正距方位図法 |
正距方位図法とは、図の中心からの距離と方位が正しく示される地図投影法で、円の中に地球全体を描くことが可能。よく知られているものでは、国連旗に描かれた地球がこの図法を用いている。中心点に対する地球の真裏の一点が円周となるため、たとえば、北極点を中心点に設定した場合、南極点が円周になる。そのため、円周に近づくほど地表が不自然に引き伸ばされ、極端なひずみが生じてしまう。正距方位図法で描かれた地図から受ける違和感は、このひずみが原因だ。
上の地図は、東京を中心とした正距方位図法で描かれており、世界各地が東京からどれほどの距離にあるか、どの方角にあるか、がはっきりと分かり、普段見慣れた長方形のメルカトル図法などではあまり気づくことの無い事実が見えてくる。たとえば東京からの直線距離では、パリとロンドンではロンドンのほうが近い。また、東京から真東に向かうと、北米ではなく南米に行き着いてしまうのである。
地図とは、球体である地球を平面に置き換えたものである。その置き換えには土台無理があり、その過程で必ず切り捨てねばならない要素が出てくる。いくつもの地図投影法が存在するのはそのためだ。用途に応じて様々な種類の地図があるのと同じように、視点の異なる地図は、世界の見方は人によって異なり、一様ではないことを気づかせてくれる。